抽象と具象を行き来する、素材としての色
建築やプロダクトの色を考える時、多くの場合は日塗工やRALで塗料の色番号を指定する。図面に色番号を表記すれば、その色の面が立ち上がる。色見本帳から色を選ぶ時、あるいはペンキで壁を塗る時、私たちは色を、物質性を持たない面として、抽象的に捉えている。
一方、日本画を描く時には、膠に顔料を混ぜて岩絵具をつくるところから始まる。顔料は鉱石を砕いてつくられる、大きさを持った石の粒である。顔料だけでは紙に定着しないため、顔料を膠で接着している。岩絵具で画を描く時、色は塗るというよりも、紙に色を載せるという感覚に近い。
石膏ボードがAEPで青色に塗られると、なにか物質というよりは抽象的な青色の面として認識するけれど、手のひらほどのアズライト(藍銅鉱)の原石を色として抽象的に認識することはない。私たちは、顔料の大きさが認識できなくなると、色を面として捉え、顔料が素材の粒として認識できる大きさになると、色を素材として捉えているのかもしれない。
色の大きさを扱うことで、抽象的な面でも具象的な石でもない、AEPでも岩絵具でもない、そのあいだをつくることができないかと考えた。
印刷のようで、壁画のような、抽象的で具象的な壁。
解像度によって抽象と具象を行き来できるような質感を目指した。
Year: 2025
Category: Material Design
Material: Pigment, iron sand, Aluminal Oxide
Location: Tokyo, JP
Client: HAKKO BIJUTSU
Design: DOMINO ARCHITECTS
Material Design: studio arche
Construction: FLAT Corporation
Photo: Gottingham